【前編】🍺 IPAってなんでこんなに人気なの?その進化の物語①
Share

今やクラフトビールの代名詞ともいえるIPA(インディア・ペール・エール。一般的にアイ・ピー・エーと呼ばれます。)。ホップ由来の苦みとアロマがクセになる、あの独特なスタイルの裏側にある歴史をご紹介します。
1. 始まりは「インドへの過酷な船旅」から
18世紀、イギリスはインドを植民地にしていました。現地にいるイ
ギリス人たちは「故郷のビールが飲みたい!」と熱望していましたが、船でインドへ運ぶには赤道を2回も通り、数ヶ月かかるという超ハードな旅が待っていました 。
当時のビールは熱により途中で腐ってしまうのが悩みでしたが、醸造家たちは2つの工夫を思いつきます 。
-
アルコール度数を高める:天然の防腐剤として機能させ、微生物の繁殖を抑える。
-
ホップを大量に投入する:ホップの強力な抗菌作用を利用し、保存性を飛躍的に高める。
こうして、インドに美味しいまま届く、タフなビール「IPAの原型」が誕生しました 。
ちなみに、ちょっとマニアックな話なのですが、IPAは「ジョージ・ホジソンが創業したボー・ブリュワリーが発明した」と言われることがありますが、実は彼がゼロから作ったわけではなく、地理的な有利さとビジネスのうまさでIPAを広めたというのが現代の定説です。
2. 「水」の魔法でさらに進化
19世紀、ナポレオンによる大陸封鎖令の影響で輸出先(主にロシアや北欧)を失ったイギリスのバートン・オン・トレントの醸造家たちがインド市場に参入します 。彼らが成功した秘密は、バートンの「水」にありました。硫酸カルシウム(=石膏)を多く含むこの地下水は、ホップの苦味をクリアに際立たせ、ビールを透明に輝かせる効果がありました 。これが「バートン化」と呼ばれる水質調整技術に昇華し、IPAは一気に高級ビールの仲間入りを果たしました 。現代でも水質調整は弊社を含めた多数の醸造所で行われる醸造技法です。水質はかなり奥が深いので、どこかでまたご紹介したいと思います。

3. どん底だった20世紀
19世紀に黄金時代を迎えたIPAですが、20世紀に入ると衰退します。理由は以下の2つと言われています。
- 戦争と増税:第1次世界大戦で材料が足りなくなり、税金も上がったせいで、IPAはどんどん薄くてアルコール度数の低い「弱いビール」になりました 。
- ラガーの台頭:冷蔵技術が進んで保存の心配がなくなると、飲みやすいラガービールが世界を席巻。IPAは「過去の飲み物」として忘れ去られてしまいます 。
IPAが日の目を見るのは、半世紀後。それもアメリカで大きく発展を見せます。
以降の話は後半に続きます。